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4月 15, 2011

[medical]【書評のような感想文】ブラックジャックはどこにいる? by 南淵明宏

あらゆる医師がさじを投げた患者の手術を行い、億単位の手術料を要求する凄腕の「医師」ブラック・ジャック。かの有名な漫画家の代表作だ。彼のような名医は、果たしてこの世にいるのだろうか。

 

皆さんはこの問いに、どう答えるのだろう。「○○科医のブラックジャックがいるじゃない!テレビでやってたよ!」「天才と呼ばれてる医師、実際にいるよね」そう答える方が多いだろう。確かに彼ら彼女らは名医であり、天才的な技術を持ち、それによって多くの人命を救っている。しかし、彼ら彼女らは生まれた時からそうであったわけではない。ブラックジャックになったのだ。

 

本書は、そのような名医の一人として多くの心臓外科手術を成功に導いている南淵医師の書だ。南淵医師に命を救われた人たちの物語だけではなく、彼が過ごした挫折の日々、今も抱える不安など、名医と呼ばれる先生の裏の顔を知る事ができる一冊だ。しかし、それだけに留まらない。本書はブラックジャックのような名医と呼ばれる先生といかにして巡り会うことができるのか、そのために患者として何をするべきなのか、について触れている。

 

日本の医師業界を巡る問題点を白日の下にさらし、それをふまえた医療サービスの正しい利用の仕方を患者である私たちに示してくれる一冊。

 

 


 
ブラよろのあの医師のモデルが書いた、医師とは何か?患者とは?を突きつけてくる「問題作」!

 

 

本書では、医師という職業がどのように教育されて現場に配属されていくのかを知る事ができる。その実態を知り、それでも「どの病院でも、どの医師の診療でも構わない」と言えるのであればいいが、恐らくそうは言えないだろう。そう、医療の質には大きな差があるのが事実なのだ。では、その質のばらつきがある医療サービスの中から、納得して自分の命と身体を任せられる医師を見つけ出すにはどうしたらいいのだろうか。

 

その端緒として、本書は「インフォームド・コンセント」のあり方について詳しく説明している。

 

皆さんは、インフォームド・コンセントという言葉を聞いた事があるだろうか。「正しい情報を得た上での合意」を意味する概念で、医療現場にて主に使われる用語だ。医師より患者に対して、対象となる行為の名称・内容・期待されている結果のみではなく、代替治療副作用や成功率、費用、予後までも含んだ正確な情報が与えられることが現場では望まれている。

 

ここで個人的な話で申し訳ないのであるが、私はこのインフォームド・コンセントを「先生の説明が出来ました。よろしくお願いします。」と同意する事という程度の理解であった。もちろん、間違ってはいない。しかし、この同意が医師に対してどのような誓いを立てたことになるのか、その理解が足りていなかったと本書を通じて痛感させられた。

 

本書では、インフォームド・コンセントを「患者が手術や治療を受けるにあたって知っておくべきすべての情報を知らされ、これらによって発生しうるリスクも理解し、その上で手術あるいは治療を受けることを納得・同意する事。それにより生じた結果には、すべて自己責任として受け入れます。」という意味が込められていると説明している。つまり、インフォームド・コンセントは患者に覚悟を迫る場。結果に対して、すべて自己責任である事を宣言する場面であるとしている。

 

では、こうした覚悟をもってインフォームド・コンセントにサインをするにはどういう心構えが必要か。本書に10か条が掲載されているので、それを示しておく。


<インフォームド・コンセントの10箇条>
1)『お医者さんは忙しそうだから』と思って聞かないのは間違い
2)質問項目を紙に書いていって、医者に見せる
3)専門用語は聞き返す
4)命や健康に関わることだから、しつこくきいて当たり前
5)医学データではなく、その医者の治療数、失敗数を聞く
6)なぜその治療法を選択したのか、ほかの治療法がないのかどうかを聞く
7)リスクについて聞く
8)『先生が決めてください』という姿勢ではだめ
9)あなたが決めることは2つ
10)納得してから治療を受ける


納得とは、その治療を受けるに当たり必要な情報をすべて精査し、その治療を受けるか、およびどの病院の誰に治療をゆだねるのかを決断し、その決定に責任を持つことであり、ここで「手術を受けます」と決断する事は「いかなる結果も引き受けます」と宣言する事と同意なのだ。インフォームド・コンセントは医師が患者に手術や予後、診療方針などについて同意を得る場面であるだけではなく、患者に覚悟を迫る場面でもあると言える。


これから言える事は、病院とは『お世話になるところではない』ということだ。いわば、医療サービスを買うところ。だから、携帯や家電、その他の商品を買うときのように、患者も医師や病院を間違わずに見つける目を養うべきなのだ。

 

今目の前にいる『先生』が無能であったり、患者の気持ちに理解を示せない人間である可能性も大いにある。どのような背景で医師が育成され、現場に出てくるのか。それを知っていれば、患者が無知のままでいていいわけがない、と合点がいく。そう、なにも知らないことは無防備なままということ。自ら知ろうとせずに『だまされた!』『そんな話は聞いていない!』と言っても相手にされない。自ら知る権利を放棄して、相手を非難する資格などあるだろうか?

 

では、賢い患者になるためにはどうしたらよいのだろう?具体的な方法は、別の南淵医師の著書に対する【書評のような感想文】で紹介したい。

 

気になる方は、しばしお待ち頂きたい。

4月 15, 2011

[medical]【書評のような感想文】ブラックジャックはどこにいる? by 南淵明宏

あらゆる医師がさじを投げた患者の手術を行い、億単位の手術料を要求する凄腕の「医師」ブラック・ジャック。かの有名な漫画家の代表作だ。彼のような名医は、果たしてこの世にいるのだろうか。

 

皆さんはこの問いに、どう答えるのだろう。「○○科医のブラックジャックがいるじゃない!テレビでやってたよ!」「天才と呼ばれてる医師、実際にいるよね」そう答える方が多いだろう。確かに彼ら彼女らは名医であり、天才的な技術を持ち、それによって多くの人命を救っている。しかし、彼ら彼女らは生まれた時からそうであったわけではない。ブラックジャックになったのだ。

 

本書は、そのような名医の一人として多くの心臓外科手術を成功に導いている南淵医師の書だ。南淵医師に命を救われた人たちの物語だけではなく、彼が過ごした挫折の日々、今も抱える不安など、名医と呼ばれる先生の裏の顔を知る事ができる一冊だ。しかし、それだけに留まらない。本書はブラックジャックのような名医と呼ばれる先生といかにして巡り会うことができるのか、そのために患者として何をするべきなのか、について触れている。

 

日本の医師業界を巡る問題点を白日の下にさらし、それをふまえた医療サービスの正しい利用の仕方を患者である私たちに示してくれる一冊。

 

 


 
ブラよろのあの医師のモデルが書いた、医師とは何か?患者とは?を突きつけてくる「問題作」!

 

 

本書では、医師という職業がどのように教育されて現場に配属されていくのかを知る事ができる。その実態を知り、それでも「どの病院でも、どの医師の診療でも構わない」と言えるのであればいいが、恐らくそうは言えないだろう。そう、医療の質には大きな差があるのが事実なのだ。では、その質のばらつきがある医療サービスの中から、納得して自分の命と身体を任せられる医師を見つけ出すにはどうしたらいいのだろうか。

 

その端緒として、本書は「インフォームド・コンセント」のあり方について詳しく説明している。

 

皆さんは、インフォームド・コンセントという言葉を聞いた事があるだろうか。「正しい情報を得た上での合意」を意味する概念で、医療現場にて主に使われる用語だ。医師より患者に対して、対象となる行為の名称・内容・期待されている結果のみではなく、代替治療副作用や成功率、費用、予後までも含んだ正確な情報が与えられることが現場では望まれている。

 

ここで個人的な話で申し訳ないのであるが、私はこのインフォームド・コンセントを「先生の説明が出来ました。よろしくお願いします。」と同意する事という程度の理解であった。もちろん、間違ってはいない。しかし、この同意が医師に対してどのような誓いを立てたことになるのか、その理解が足りていなかったと本書を通じて痛感させられた。

 

本書では、インフォームド・コンセントを「患者が手術や治療を受けるにあたって知っておくべきすべての情報を知らされ、これらによって発生しうるリスクも理解し、その上で手術あるいは治療を受けることを納得・同意する事。それにより生じた結果には、すべて自己責任として受け入れます。」という意味が込められていると説明している。つまり、インフォームド・コンセントは患者に覚悟を迫る場。結果に対して、すべて自己責任である事を宣言する場面であるとしている。

 

では、こうした覚悟をもってインフォームド・コンセントにサインをするにはどういう心構えが必要か。本書に10か条が掲載されているので、それを示しておく。


<インフォームド・コンセントの10箇条>
1)『お医者さんは忙しそうだから』と思って聞かないのは間違い
2)質問項目を紙に書いていって、医者に見せる
3)専門用語は聞き返す
4)命や健康に関わることだから、しつこくきいて当たり前
5)医学データではなく、その医者の治療数、失敗数を聞く
6)なぜその治療法を選択したのか、ほかの治療法がないのかどうかを聞く
7)リスクについて聞く
8)『先生が決めてください』という姿勢ではだめ
9)あなたが決めることは2つ
10)納得してから治療を受ける


納得とは、その治療を受けるに当たり必要な情報をすべて精査し、その治療を受けるか、およびどの病院の誰に治療をゆだねるのかを決断し、その決定に責任を持つことであり、ここで「手術を受けます」と決断する事は「いかなる結果も引き受けます」と宣言する事と同意なのだ。インフォームド・コンセントは医師が患者に手術や予後、診療方針などについて同意を得る場面であるだけではなく、患者に覚悟を迫る場面でもあると言える。


これから言える事は、病院とは『お世話になるところではない』ということだ。いわば、医療サービスを買うところ。だから、携帯や家電、その他の商品を買うときのように、患者も医師や病院を間違わずに見つける目を養うべきなのだ。

 

今目の前にいる『先生』が無能であったり、患者の気持ちに理解を示せない人間である可能性も大いにある。どのような背景で医師が育成され、現場に出てくるのか。それを知っていれば、患者が無知のままでいていいわけがない、と合点がいく。そう、なにも知らないことは無防備なままということ。自ら知ろうとせずに『だまされた!』『そんな話は聞いていない!』と言っても相手にされない。自ら知る権利を放棄して、相手を非難する資格などあるだろうか?

 

では、賢い患者になるためにはどうしたらよいのだろう?具体的な方法は、別の南淵医師の著書に対する【書評のような感想文】で紹介したい。

 

気になる方は、しばしお待ち頂きたい。