元々僕は「お金があればいい」という人間ではない。お金は必要最低限でよくて、その中でうまくやりくりすることだけでも人生を楽しくすることは出来る、と両親を見て確信している。僕の家はそれほどいい家ではない。生活もそれほど安定しているわけではなかったし。でも、こうして健康でかつ両親との関係も良好だ。これはすべて、親が「お金に困らない/困らせない生き方」をしてくれていたからだと思う。そんな両親を思い浮かべつつ、本書を手に取ってみた。
紹介する書籍(雑誌)はこちら => PRESIDENT PLUS「金持ち人生、貧乏人生ー10000家計診断の結論 お金に困らない生き方」2011年1月15日発行。
印象的な記事や記述が散見されて、この本は今後も持ち続けたい一冊になりそうだ。アマゾンにこの本が置いていなかったので、今日のところは上記の記述のみでご勘弁頂きたい。
本書でもっとも印象的だったのは、格差のパラドックスと称せられる現象だ。本書ではインターネット著差を実施、年収800万以上を「上流」、800万未満を「中流」、300万未満を「下流」として統計を出した。それによると、上流の人ほど健康管理に気を使い、スポーツジムなどで汗を流す習慣を持っている一方、下流層は家にこもって高カロリーのジャンクフードで食事を済ませる傾向があるそうだ。そのため、仕事で忙しい人ほど健康的で、下流ほど肥満で成人病にかかりやすい状況にあるという。かつて成人病は「贅沢病」と呼ばれたが、今では下流層であるほどその可能性が高くなるというパラドキシカルな状態になってきているそうだ。
この点以外にも、上流は新しい知識を得るために読書やインターネットを活用し、コミュニケーションも活発でうまい。しかし、幸福感を「お金」に感じていないのが特徴で、それよりも「家族が友人、恋人に恵まれているから」と応える人が8割という。つまり幸福/不幸を左右するのは人間関係であり、本をただせば「対人関係力の有無」によるのだろう。とはいえ、対人関係力があってもお金がなければ新しい情報に触れる機会を得られないし、交流のための場を作ることもできない。物質的な豊かさと精神的な幸福感は切っても切れない関係にあることは否定できない。おそらく、お金の有無/多少は幸福を感じることの前提条件であり、一定の水準を下回ると『不幸』を感じ、上回ると『幸福』を感じられるようになる。しかし、一定の水準を大きく上回ったからといってその分多くの幸福を感じられる、というわけでもない。お金とは不思議なものだな、と改めて本書を読んで感じた。
本書では、上/中/下流の幸福感格差の原因を「コミュニケーション能力」にあるとしている。お金がなくとも円満な家庭、豊かな人間関係を構築することができる人は「社会の中に生きている」という所属の感覚を得られるし、たとえ仕事にあぶれたとしても次の仕事を見つけられる可能性はある。しかし、コミュニケーションが下手な人は孤独を感じやすく、かといってどう人と仲良くしたら良いのかわからずますます孤独を強めていく。就職しようにも面接でうまくやりとりができず、望んだ職にはつけない。つけたとしても、上司とうまくやれず収入は少ないまま。そんなシナリオが用意されているように思う。
コミュニケーション能力という点では、個人的に「ちょっと危ういな。。」と思い当たる節があったので、本書を読んでいて背筋が寒くなった。しかし、今気づけたことは幸いだ。そして、この能力を高める目的/ゴールは明らかだ。特に、鍼灸師として人の身体を診る立場になる以上、コミュニケーション能力のなさは致命的だ。今後の生活/活動の中で、現状と目指したい状態とのギャップを少しずつ、でも着実に縮めていきたいと思う。